アメリカには投資先として多くの魅力があります。特に不動産は土地が広く、自然が雄大、田舎から大都会まで物件が多様で豊富、日本と比べてお手頃価格の掘り出し物がたくさんあり、また不動産テックが進んでいるため購入や売却の利便性が高い、など数え上げればキリがありません。
アメリカのリアルな不動産事情についてお伝えして行きましょう。(岩田太郎・在米ジャーナリスト)
・アメリカの不動産の一番の魅力とは
アメリカの不動産の魅力は、なんと言ってもアメリカ経済の強靭性と回復力が裏付けになっていることでしょう。
無謀な低所得層向け住宅ローンのバブル崩壊がきっかけとなり、2008年9月に始まった世界金融危機の震源地となったアメリカですが、直後の経済の落ち込みにもかかわらず住宅価格は順調に伸びています。
米国勢調査局の報告によれば、2009年1月に土地付きの住宅価格のデータを大きさの順に並べたとき、全体の真ん中に位置する「中央値」は20万8600ドル(約2330万円)でした。
これが2014年1月には26万9800ドル(約3013万円)へと上昇し、2019年1月には30万3900ドル(約3394万円)に達し、10年間でおよそ10万ドル(約1117万円)伸びています。
出展:United States Census Bureau(米国勢調査局)
・土地付き住宅価格も上昇傾向
一方、同期間中の土地付きの住宅価格の「平均値」は24万5200ドルから33万7300ドル、そして35万8000ドルへと、やはり10万ドル以上も価値を増しています。
こうした統計の数字が示唆することは、アメリカの株式価格平均が大暴落の後でもやがて回復して下落前のレベルを超えた価格上昇を見せるように、同国の住宅価格平均も弾力的な回復力を備えており、投資対象としては長期的な益が見込めるということではないでしょうか。
・「人口増と経済成長」が価値増大の源泉
不況にも強いアメリカの不動産が投資対象として有望なのは、価格上昇を支えるしっかりとした裏付けがあるからと言えるでしょう。
人口が減少に転じているわが国と違い、アメリカは人口が増え続けています。
2018年7月の米国勢調査局の推計では、およそ3億2700万人が同国で暮らしていますが、2010年4月の数字との比較で6%も成長しています。
出展:United States Census Bureau(米国勢調査局)
さすがのアメリカでも増加率は漸減していますが、人工そのものは成長を続けているのです。これが意味することは、「住宅需要が引き続き伸びる」、つまり「住宅価格は引き続き上昇が期待できる」という経験則による投資予想の再確認ではないでしょうか。
さらにアメリカ経済は、国民総生産(GDP)の伸び率がゆるやかに減速をしているものの、米商務省経済分析局によれば2018年には前年比で実質2.9%成長するなど、わが国の2018年の実質成長率が1.2%であったことと比較すると、強靭であると言わざるを得ません。
強い経済は住宅価格の上昇と正比例の関係にあることから、アメリカ不動産は理想的な投資対象のひとつに数えられるわけです。
・短期的な材料も追い風となるアメリカ不動産
また、アメリカ不動産には短期的な追い風も吹き始めています。アメリカの中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)は強気に行ってきた利上げについて、2018年12月を最後に休止しました。
言うまでもなく政策金利は住宅ローン金利と密接に連動しており、米連邦住宅抵当貸付公社(フレディマック)によれば、2018年後半には年利5%に迫る勢いであった30年固定住宅ローン金利が2019年4月には4%前後に下がってきています。
金融政策がさらに緩和的になる期待から、住宅ローン金利はしばらく低下するでしょう。これは、月々のローン支払い額の低下につながるもので、投資環境が改善していると言えます。これに加え、アメリカでは大型減税、インフラなど財政出動による景気刺激策、株価の好調によるリスクオンなどの、短期的な好条件が不動産投資に追い風となっています。
それでは、次回はアメリカ不動産の取引透明度の高さや中立さをお伝えしていきましょう。