最近見聞きすることが多くなった「オルタナティブ投資」のことが気になりませんか?投資のリスク管理に使えるらしいという話はよく聞くものの、どういうものかイマイチよく分からない、なぜリスク管理になるのかも分かったようで分からない・・・。これは「オルタナティブ投資」という言葉に初めて接した人に共通する感想だと思います。
- そもそも、オルタナティブ投資ってなに?
- なぜ最近になって言葉を見聞きすることが多くなったのか?
という疑問から始まり、
- オルタナティブ投資がリスク管理に使えるって本当?
- 普通の投資とどう違うの?
という疑問も生まれてくると思います。
そして最終的には、
- オルタナティブ投資を自分も始められる?
- 始めるにはどうすればいいの?
という疑問に落ち着くと思います。
そこで投資家のためのメディア「不動産投資の教科書」は、このオルタナティブ投資について「言葉を聞いたことがある程度」という方がオルタナティブ投資を本質的に理解できるように構成し、「自分も始めたい」という方のために必要な情報を網羅しました。
最後までお読みになった時点で、オルタナティブ投資を理解した上で投資を検討できるようになりますので、どうぞ最後までお付き合いください。
目次
1、オルタナティブ投資が注目を集めている3つの理由
なぜ、オルタナティブ投資が注目を集めているのでしょうか。そこにある3つの理由から解説していきます。
(1)リスクを分散して資産防衛ができる
オルタナティブ投資の「オルタナティブ」には、代替、代わり、別の、といった意味があります。つまりオルタナティブ投資は何かの代わりになる投資ということです。
この「何か」とは、伝統資産のことを指しています。伝統資産とは私たちにもなじみのある株や債券などのことです。オルタナティブ投資とは、これらとは違う別の資産に対する投資です。
オルタナティブ投資は伝統資産とは違う別のものに投資をすることで、株や債券が急落したり市場が混乱してしまった局面に備えるのが目的です。市場が低迷したり混乱している時であっても、その影響を受けにくい資産を持つことでリスクを軽減することができます。
詳しくは後述しますが、不動産やヘッジファンド、株の中でも未公開株など、伝統資産ではないものに投資をすることで、株や債券だけを持っておくことの危険性を緩和してくれます。
(2)投資対象や手法の選択肢が増える
オルタナティブ投資の選択肢は実に広く、「株や債券」以外のものはすべてオルタナティブ資産に含まれます。ヘッジファンドやデリバティブ(金融派生商品)であれば投資対象としてイメージしやすいと思いますが、例えば金銭的な価値の高い美術品もオルタナティブ資産に定義できます。なぜなら、株や債券とは異なる資産だからです。
多くの資産を持つ人にとって、最も怖いのはその資産が無価値になってしまうことです。どれだけお金を持っていてもお金が紙切れになってしまったら資産家ではいられなくなるからです。
オルタナティブ投資は本来、こうした富裕層の人たちが資産防衛をするために保有資産の多様化をしておきたいという考え方で生まれたものです。選択肢が広いのはそのためで、もちろん一般の投資家もオルタナティブ投資によって資産の多様化でリスク管理をすることができます。
(3)市場の低迷局面であっても利益を狙える
株や債券といった伝統資産は、景気や市況の影響を強く受けます。全資産を株だけで持っている人の資産は、株式市場に運命を握られていると言っても過言ではありません。
しかし、オルタナティブ投資は市場が低迷している局面であっても資産を守り、さらには増やすことを目的としているものもあります。市場が永久に上昇局面ということはあり得ないので、オルタナティブ投資によって市場が低迷している時であっても目減りを防ぎ、さらには資産が増えるような仕組みを持っておく必要があるのです。
その期待に応えてくれるのが、オルタナティブ投資なのです。
2、ちょっと難しいオルタナティブ投資を一発解説
オルタナティブ投資について冒頭では簡単に解説しましたが、それでもやはり難しいという印象をお持ちの方もおられると思います。ここではオルタナティブ投資とは何かという解説に絞って、理解を深めていただきます。
(1)とても意味の広いオルタナティブ投資
冒頭で述べたように、オルタナティブ投資とは「株や債券以外」への投資を指す総称です。この記事では、その中の代表的なものとして以下の5つを解説します。
- 不動産
- ヘッジファンド
- 未上場株式
- コモディティ
- インフラ資産
早くもよく分からない言葉が登場したとお感じかも知れませんが、これらの意味は後述していきますのでご安心ください。ここで押さえておきたいのは、「株や債券」といった伝統資産とは違う別のものを「伝統資産の代わりに」投資するのがオルタナティブ投資だという一点です。
その目的は、2つです。
- 伝統資産だけに集中投資するリスクを分散
- 伝統資産が値下がりしても利益を狙える仕組みづくり
これが理解できれば、すでにオルタナティブ投資とは何かという根本的な部分はすでにマスターできたと思っていただいて問題ありません。
(2)まだまだあるオルタナティブ投資
前項でオルタナティブ投資の概要と、主な投資対象について解説しました。ここではさらに、前項で紹介していないものからオルタナティブ投資にはどんなものがあるのかをご紹介したいと思います。
ここで列挙しているものもすべて、オルタナティブ投資です。
- 株の空売り
- 金融先物
- 保険ファンド
- REIT、不動産ファンド
- 貴金属、美術品
- エネルギー
- 社会インフラ
これ以外にもまだまだあります。こうして見ると、金銭的な価値があるものはすべて投資対象となる可能性があり、それらへの投資はオルタナティブ投資になることがお分かりいただけると思います。
(3)オルタナティブ投資に適しているのは、こんな人
オルタナティブ投資が持つ本来の目的はリスクヘッジなので、何らかの金融資産を持っている方すべてにメリットがあります。特に1,000万円以上の資産規模になると資産をいかに増やすかという視点に加えて、資産をいかに守るかという視点も重要になります。
そんな場合、株や債券といった伝統資産だけで資産を保有することは危険が伴うので、不動産や各種ファンドなどに分散投資をするとリスクを軽減することができます。
つまり、何らかの投資をしている人、一定以上の資産をお持ちの方はすべて、オルタナティブ投資に適した方です。
3、オルタナティブ投資の主な種類
実にたくさんあるオルタナティブ投資の中でも代表的なもの、すでに多くの投資家が投資しているものを5つピックアップして解説します。
(1)不動産
土地や建物といった不動産の現物を、現物不動産といいます。「不動産投資の教科書」では戸建住宅からマンション、アパート、さらにはオフィスビルなどさまざまな不動産投資のノウハウを解説していますが、これらはすべて現物不動産投資です。
不動産投資には他にも、REITや不動産私募ファンド(ソーシャルレンディング)などの投資方法があります。もちろんこれらもオルタナティブ投資に含まれ、株や債券に代わる投資対象として最も代表的な存在です。
現物不動産については「不動産投資の教科書」に多くの解説記事がありますので、そちらもぜひご参照ください。REITについては「不動産投資信託(REIT)で始める、資金10万円以下からの本格的な資産形成」で、不動産私募ファンドについては「不動産ファンド投資で定期預金の280倍のリターンを得る4つの行動」にて、それぞれ詳しく解説しています。
(2)ヘッジファンド
ヘッジファンドという言葉は経済ニュースなどによく登場するので、見聞きしたことがある方は多いと思います。しかし、いざヘッジファンドとは何かと問われるとうまく説明できないという方も意外に多いのではないでしょうか。
投資家から預かったお金を運用して利益を上げ、それを投資家に還元するのがヘッジファンドの仕組みですが、先物やデリバティブといった高度な金融商品を投資対象としており、「相場の下落局面でも利益を上げる」ことと、「より高いリターンを狙って投資家の期待に応える」ことを目的としているのが特徴です。
(3)プライベート・エクイティ(未上場株式)
プライベート・エクイティというと難しく聞こえますが、簡単に言うと未上場株、未公開株のことです。未公開という響きからはこれから上場が見込まれている株のことを指しているイメージがありますが、それは一部です。
ベンチャー企業への投資や不信企業の再生、さらには破たんしそうな企業の株式を買うものなど、その種類は多彩です。いずれもファンド形式で運営されており、投資家はそのファンドにお金を預けることによって発生した利益の分配を受けます。
上場されて取引されている現物株は伝統資産ですが、上場されていない株はすべてオルタナティブ資産です。
(4)コモディティ
コモディティとは商品という意味で、そこには金属や燃料、食糧などの各種資源が含まれています。コモディティの中でも特に貴金属は長年にわたってオルタナティブ資産の代表的な存在であり、価値が安定していることから金に投資をしている投資家は多くいます。
ご存知のように資源には限りがあるため、価値が大きく損なわれることは考えにくいというのが大きな魅力です。
(5)インフラ資産
正式にはインフラストラクチャーという言葉ですが、日本では社会基盤のことを略してインフラと呼びます。道路や鉄道、上下水道や通信網、発電所、港湾施設などなど、私たちの社会は膨大な数のインフラに支えられています。
インフラ資産とはこうした資産の総称で、こうした資産への投資はオルタナティブ投資です。社会基盤として機能しているものだけに、景気変動に関係なく価値が保たれます。
最近ではインフラ資産のひとつである太陽光発電所に投資をするインフラファンドが利回りの高さと安定性によって人気を集めています。
4、オルタナティブ投資の3大メリット
すでに解説してきていることも含まれますが、オルタナティブ投資のメリットを3つに整理して解説します。
(1)投資機会の拡大、チャンスの拡大
オルタナティブ投資として投資家に人気が高いものを見ると、一般投資家にとってこれまで直接投資することが難しく縁遠かったものが多いことに気づかされます。
例えば、REITは投資家から集めた資金で規模の大きな不動産を購入して運用しますが、一般投資家がこれだけの規模で不動産投資をするのは難しいでしょう。不動産私募ファンドも同様で、大口投資家を対象としていた投資案件を一般投資家も投資できるように小口化したものです。
その他にも未公開株やヘッジファンド投資など、オルタナティブ投資は投資家にとってこれまで縁遠かった投資対象が選択肢となるため、投資機会の拡大というメリットをもたらします。
(2)市場の低迷局面でも収益の可能性
株価が下落している局面で利益を出す方法と言えば、空売りが一般的です。この空売りも現物株取引ではないため、オルタナティブ投資の一種です。その他にも先物のオプション取引など相場が下落している局面でも利益を狙えるのがオルタナティブ投資のメリットです。
そもそもヘッジファンドは絶対利益追求型と呼ばれ、どんな局面であっても利益を狙うことを目的としています。このことを見ても、市場の低迷局面でも利益を狙えることはオルタナティブ投資に期待されているメリットであることが分かります。
(3)リスク分散
資産家と呼ばれる規模の資産を保有している人にとって、資産を守ることは至上命題です。「卵は1つのかごに盛るな」という相場格言があるように、分散投資はリスク管理の基本です。
オルタナティブ投資にはリスク分散の考え方から考案されたものが多く、株や債券といった伝統資産だけでは心もとない投資家にとって有効な分散投資先となります。
5、オルタナティブ投資の3大デメリット
投資家にとって強い味方であるオルタナティブ投資ですが、やはりデメリットもあります。直接的なデメリットは1つですが、それ以外の派生的なデメリットも含めて3つを挙げてみました。
(1)仕組みが複雑でコスト増の可能性
オルタナティブ投資は現物資産に対して投資の方法を工夫したり、従来であれば投資対象になり得なかったようなものに投資をしたりすることで代替効果を生み出しています。
そのため仕組みが複雑になりがちで、それゆえにコスト増になる可能性があります。リスクを軽減して投資効果を高めるために人の手を借りているということは、その人たちに対するコストも発生します。
(2)投資対象へのなじみが少なく分かりにくい
この記事でご紹介した中にも、初めて見るような投資対象があったかと思います。そもそもオルタナティブ投資は、なじみの深い伝統資産の代わりになることを前提とした投資です。そのため一般投資家からはなじみの薄いものが多く含まれており、それゆえに敷居の高さを感じてしまう方も多いでしょう。
よく分からないものに投資をするべきではない、というのは特に投資初心者の方が守るべき鉄則です。その意味でオルタナティブ投資は初心者にとって縁遠いものになってしまいがちです。
(3)どちらかというと機関投資家向け
オルタナティブ投資の一種であるヘッジファンドは、機関投資家や資産家など大口の投資家を対象としています。一般投資家の方々が運用したいと考えている資産規模では「桁が違う」こともあるので、投資をしたいと思ってもその要件を満たしていないこともあります。
もちろん、すべてのオルタナティブ投資が一般投資家を想定していないというわけではありません。不動産私募ファンドのように大口投資を小口化したものや、最初から一般投資家を対象とした投資商品もあります。
6、初心者にオススメのオルタナティブ投資5選
投資初心者の方々にとって取り組みやすいオルタナティブ投資を、5つピックアップしました。それぞれの投資を始める方法やポイントを解説します。
(1)J-REIT
REITの中でも証券取引所に上場されているものを、J-REITといいます。「J」と付くことからお分かりのように、日本国内の不動産が運用対象です。そのため日本人投資家になじみやすく、数十万円あればほとんどの銘柄を購入できます。
J-REITは上場されていることもあって、証券会社の口座から簡単に購入できます。口座開設やREIT銘柄の選び方など、詳細な情報は「不動産投資信託(REIT)で始める、資金10万円以下からの本格的な資産形成」で解説していますので、ぜひそちらもお読みください。
(2)不動産私募ファンド
J-REITが公募ファンドといって不特定多数の投資家がいつでも売買できるのに対して、私募ファンドは同じ不動産を対象としたファンドでありながら特定の大口投資家を対象とした不動産ファンドです。
特定の大口投資家向けに有利な条件のファンドとして運用されているものですが、近年ではクラウドファンディングを活用することで小口化されており、一般投資家も参加できるようになりました。
不動産私募ファンドへの投資方法や投資先の選び方などについては、「3,000万円を1億円にしたい方必見!極めて現実的な2大資産運用法」の「4、高利回りで話題の不動産私募ファンド」に詳しい解説があります。この記事は3,000万円の運用方法を解説していますが、不動産私募ファンドなら少額からの投資も十分可能です。
(3)ヘッジファンド型投資信託
ここまでの解説でも触れてきたように、オルタナティブ投資の選択肢としてヘッジファンドも有効です。しかし、実際のところ個人投資家がヘッジファンドに投資をするとなると資金規模などの問題で敷居が高いと言わざるを得ません。
しかも代表的なヘッジファンドの多くは海外のファンドなので、言語の問題もあります。そこで「不動産投資の教科書」としては、日本国内で買いやすいヘッジファンド型の投資信託をオススメしたいと思います。
ヘッジファンド型投資信託の大きな特徴は、絶対利益追求型であることです。つまり運用対象の上昇局面だけでなく下落局面であっても、常に利益を上げることを念頭に置いており、本物のヘッジファンドと運用方法が似ているのが特徴です。
以下の投資信託は証券会社で簡単に購入できるので、ぜひ一度検討してみてください。
マクロ・トータル・リターン・ファンド
https://www.am.mufg.jp/fund/252460.html
ロボット戦略 世界分散ファンド
http://www.tdasset.co.jp/fund/RAD/
BNYメロン・リアル・リターン・ファンドBコース
https://site0.sbisec.co.jp/marble/fund/detail/
野村グローバル・ロング・ショート
https://site0.sbisec.co.jp/marble/fund/detail/
(4)インフラファンド
インフラファンドとは、インフラ資産を運用対象とする投資信託のことです。この記事でもインフラ資産のことをオルタナティブ資産の一種であると解説している通り、インフラ資産の投資信託であるインフラファンドはオルタナティブ投資の有望な選択肢です。
2018年3月現在、4つの銘柄が証券取引所に上場されています。
タカラレーベン・インフラ投資法人
いちごグリーンインフラ投資法人
https://www.ichigo-green.co.jp/
日本再生可能エネルギーインフラ投資法人
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
https://www.canadiansolarinfra.com/
REITと似た構造になっている投資信託ですが、不動産賃料を収入源としているREITに対して間接的な形ではあるものの、売電収入という伝統資産と全く異なる収益構造になっているためインタラクティブ投資のメリットを享受することができます。
(5)現物不動産
戸建住宅やアパート、マンションなどを所有して入居者からの賃料収入を得るのが、現物不動産投資の基本的な形です。購入時よりも高い価格で売却することができれば、値上がり益も手にすることができます。
賃料が収入源となっているため伝統資産とは収益構造が異なり、オルタナティブ投資として有効です。
最初からいきなりアパートやマンションを一棟丸ごと購入するとなるとリスクも高いため、まずは区分マンション物件など現実味のある規模から始めてみるのが良いのではないでしょうか。
「不動産投資の教科書」には、現物不動産投資のノウハウを解説する記事がたくさんあります。その中から初心者の方が知っておくべき情報をまとめた記事をご紹介しますので、これらの記事をお読みになった上で現物不動産投資をご検討ください。
まとめ
この記事を読む前には、「オルタナティブ投資って聞いたことはあるものの、イマイチよく分からない」という状態の方が多かったと思います。読み終えた今は、いかがでしょうか?オルタナティブ投資について、「株や債券など伝統資産とは別の投資」であり、「伝統資産の限界を解決するもの」であることがお分かりいただけたと思います。
投資はリスク分散が基本中の基本なので、オルタナティブ投資もその分散先として検討することで投資の多様性が生まれ、そして安全性が高まります。
お金を増やすことも大事ですが、減らさないための守りにオルタナティブ投資を意識していただければと思います。