• 不動産投資
  • 2017/8/1

資産管理会社とは?いますぐ設立すべき人と具体的な設立の全手順

不動産投資を含む資産形成をしていく過程で、多くの人が一度は見聞きするのが「資産管理会社」の存在です。読んで字のごとく資産を管理する目的に特化した会社のことですが、この資産管理会社を持つことによって不動産などの資産を持っている人には多大なメリットがあるというのも見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

  • 資産管理会社ってどんな会社?
  • なぜ資産を持っている人にはメリットがあるのか?

この記事では、こうした疑問を解決するために資産管理会社の基本からメリット、デメリットを徹底解説したいと思います。さらに、資産管理会社への関心をより高まったという方のために資産管理会社を設立する一連の流れもまとめています。

月間40万人の「不動産投資の教科書」読者の皆さんだけでなく、不動産を含む資産形成をお考えの方すべてにメリットのあることなので、ぜひ最後までお読みください。

1、資産管理会社の基礎知識

(1)資産管理会社とは?

資産管理会社は、文字通り資産管理を事業目的とした会社のことです。ただし既存の資産管理会社を指しているのではなく、不動産投資や資産形成を行っている人が自らの資産を管理する目的で設立する会社のことを言います。自分で設立して自分のためだけに業務を行うため、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

資産管理という業務自体は個人事業としても十分可能ですが、会社法人を設立することでさまざまなメリットが生まれるため、一定の資産を持っている人(特に相続の問題を抱えている人)の間では資産管理会社を設立する動きが広がっています。

(2)資産管理会社が急増している理由

資産家や富裕層の人たちが自らの事業を法人化する例は多くあります。例えば先祖代々の土地を多く所有している資産家の場合、その不動産事業に特化した会社を設立している場合などです。

その他にも芸能人が個人事務所を立ち上げて会社法人にしている例などもありますが、これらの主な理由は税制上のメリットがあるからです。

資産管理会社を立ち上げたからといっても、日々の業務や生活が大きく変わるわけではありません。不動産事業の収入や経費支出などが資産管理会社を経由することによって経理上の扱いが異なるだけというのが、基本的なスタイルです。

(3)資産管理会社を持つべきなのは、こんな人

資産管理会社という名前の通り、こうした会社法人を活用してメリットが得られるのは「資産」がある人です。では、その資産がどの程度の規模なのか、そこから派生するさまざまな事情も踏まえて、資産管理会社を持つことでメリットが得られる人物像を列挙してみましょう。

  • 土地や株、預金などの資産を持っている人
  • 個人事業主
  • 相続税の発生が見込まれる人
  • 家業、副業があるサラリーマン

この他にもさまざまなパターンが考えられますが、最も重要なのは本業以外の事業がある人と、資産があって相続対策が必要な人です。

こうした条件に1つでも当てはまる人は今のままだと「丸腰」である可能性が高く、「武装」という意味でも資産管理会社を検討する価値があるでしょう。

(4)資産管理会社の組織や形態

資産管理会社にも、大きく分けて2つの法人形態があります。1つは株式会社、もう1つは合同会社です。合同会社というと耳慣れない方がおられるかも知れませんが、有限会社に代わる組織形態として導入されたものです。家族経営の会社や小規模事業などに適した会社組織として設立事例が増えています。

会社形態はどちらであっても特に有利・不利が分かれるということはなく、むしろ合同会社のほうが低コストであることから人気が高くなっています。

資産管理会社にはもう1つ、「その会社に何をさせるか」という分類があります。保有型と管理委託型に分けられ、最近では圧倒的に保有型が多くなっています。理由は節税効果の違いで、資産管理会社に個人資産である不動産管理を任せるのではなく、資産管理会社が不動産を保有して経営の主体となるほうが高い節税効果が得られます。

これらをマトリックスにすると、以下のようになります。

合同会社 株式会社
保有型 管理コストが安く節税効果が高い 節税効果、対外的信用は高いが会社にかかるコストが高い
管理委託型 管理コストは安いが節税効果が低い コストが高く、節税効果が低い

2、こんなにある、資産管理会社を持つ5大メリット

このマトリックスを見ると、合同会社で保有型の資産管理会社が多い理由が一目瞭然です。

(1)不動産収益などに大きな節税効果

個人事業である不動産投資を法人化することによるメリットの中で、最も注目すべきなのが節税効果です。最もよくあるのが、資産管理会社から自分自身に報酬や退職金の形で金銭を支払う形です。個人で不動産投資をしている場合は自分に報酬を支払っても経費計上できませんが、あくまでも別人格である資産管理会社から自分に対して報酬を支払った場合は会社の利益が減るので法人税を低く抑えられることになります。

個人で不動産投資をしている場合、個人所得に対して所得税が発生します。その所得税をもとに住民税も算出されるため税金が高くなり、保有している資産の規模によっては最大で55%程度まで税率が上がってしまいます。その一方で資産管理会社が不動産を所有して投資を行った場合、法人税の最高税率は23.4%であり、そこに事業税率や地方法人特別税率などを加算しても実効税率は35%以内に収まります。

これだけでも大きな節税効果ですが、それ以外にも「会社にすること」によって他の事業で発生した損失を通算できることや、日々のさまざまな出費の中に経費として計上できるものが多くなるため、さらに節税効果は高くなります。

(2)資産を分散できる

資産管理会社は、会社法人です。会社法人には役員が就任するため、個人とは違って1人だけのものではなくなります。個人で不動産投資を行うと所有権はその人に集中しますが、この主体を資産管理会社にすることで役員に就任した人で共有することが可能になります。

親族間で資産を分散できることは、相続対策にもなります。特に生前贈与を検討している人にとってはメリットが大きいので、資産分散を生前贈与に活用できるメリットについては次項で解説します。

(3)有利な生前贈与で相続対策

役員報酬などの形で資産の分散が可能な資産管理会社のメリットには、相続対策としての資産の移転に大きな関わりがあります。

個人のまま相続をすると名義人となっている資産が丸々相続税の課税対象となりますが、資産管理会社に親族を役員として就任させると役員報酬という形で金銭を支払うことができ、それを続けることで将来の相続人となる人への資産の移転が可能です。

しかも資産管理会社から役員報酬を支払うことで法人の利益が減少し、法人税も軽減されます。

(4)相続時の遺産分割がスムーズになる

個人が所有している状態の資産を相続すると、その資産の形のままで遺産分割も行われます。それに対して資産管理会社に資産を保有させて相続となると、その資産管理会社の株式という形で相続されることになります。

土地などの不動産だと遺産分割が難しく、それゆえに争いを引き起こしやすくなりますが、資産管理会社に一括して不動産を所有させてその株式を分配すれば、分割の難しい資産であっても容易に分割できるようになります。

(5)厚生年金に加入できる

個人事業者が加入する年金は国民年金です。昨今の年金不信によって未納率も高くなっており、受給開始年齢や受給額についての不安も付きまといます。その一方で給与所得者が加入している厚生年金は内容が手厚く、可能であれば自分も加入したいと考えている個人事業者は多いのではないでしょうか。

資産管理会社を設立してそこの役員、社員として所属すれば給与所得者となるため、厚生年金などの社会保険に加入できるようになります。

3、資産管理会社のデメリットにも注目

(1)法人の維持コスト、事務的負担

資産管理会社という新たな法人を維持する必要が生じるため、法人の維持コストや事務的な負担が新たに発生します。個人事業者の時は所得税や住民税だけを支払っていたところに、資産管理会社の法人税や事業税支払いが加わることになります。これらを加算しても節税効果はあるのですが、そのための経理処理が複雑になるのは避けられません。

(2)社会保険料負担

資産管理会社を設立するメリットの中に社会保険への加入を挙げていますが、これはメリットである一方で社会保険料の支払い義務というデメリットと表裏一体です。

普通の給与所得者であれば会社と折半している社会保険料のうち半分を支払えば済みますが、資産管理会社の実体は会社と役員の両方が自分自身もしくは身内です。つまり経営者が支払うべき社会保険料も事実上の自己負担となります。

(3)資産管理会社自体の価値が低い

一般的な会社には保有資産だけでなく事業の有望性など、有形・無形の企業価値があります。こうした企業価値を備えている会社であれば会社そのものに価値がありますが、節税目的で設立された資産管理会社はペーパーカンパニーのように見なされるため、資産管理会社を売却したり換金するにあたっての価値は低いと思っておいた方が良いでしょう。会社を売却、譲渡しようと思っても買い手がつく可能性は極めて低いと思います。

(4)赤字でも毎年7万円の住民税が必要

資産管理会社は法人という人格を持っているので、その法人格に対して住民税が必要になります。この金額は赤字決算であっても最低7万円が必要になるので、これは資産管理会社の維持管理コストとなります。

4、意外に簡単?資産管理会社を設立するまでの流れ

(1)「資産管理会社」という会社について

資産管理会社を設立するといっても、「資産管理会社」という特別な会社形態があるわけではありません。一般的な会社法人を設立して、その業務内容が資産管理であるというだけのことです。

そのため、資産管理会社設立に必要なものや会社設立までの流れは、一般的な会社と同じです。それでは資産管理会社を設立するにあたって大まかな流れと、それぞれのプロセスでやるべきこと、揃えるべきものをまとめました。

(2)社名を決める

株式会社、合同会社のどちらを設立するにしても、会社には社名が必要です。社名には一定のルールがあり、それに従った名前でなければなりません。

社名には必ず「株式会社」もしくは「合同会社」という文言が付いている必要があるので、「〇〇株式会社(合同会社)」もしくは「株式会社(合同会社)〇〇」といった法則にしたがった名前を決めます。

その他にも、同一屋号の会社がないかをネット検索で調べ、それを避けた名前にする必要もあります。

(3)会社設立に必要なもの、書類を揃える

資産管理会社を設立するにあたって、事前に以下のことを決めておきましょう。会社の基本的な情報です。

  • 本店所在地(自宅でもOK
  • 出資者、役員(自分、家族、親族)
  • 資本金(1円でもOK
  • 決算月(設立から1年以内であればいつでもOK

ご覧のように、どれも特別に用意する必要があることはありません。役員は資産の移転・分配をしたい人を選任します。

次に、準備するべきものや書類です。

①代表者印、角印、銀行印

代表者印、角印、銀行印は法人3点セットとも呼ばれる印鑑のセットです。契約書や手形など重要書類に使われる代表者印(丸印)、請求書に使う角印、そして銀行口座に登録する銀行印というように使い分けるので3つ用意します。印鑑屋に行くと3点セットとして作ってもらうことができます。

②定款

定款は会社の基本的なルールを定めているもので、事業内容のところに不動産経営の文言を入れておく必要があります。

ネット上にたくさんの雛形がありますが、司法書士に依頼して作成してもらうのが最も確実でしょう。数万円の費用で定款を作成してくれます。

 ③就任承諾書

就任承諾書は役員に就任する親族それぞれから集めます。特に決まった書式はありませんので、「〇〇(資産管理会社)の設立時取締役に選任されたので、その就任を承諾します」という文言と日付、本人の住所と名前があればOKです。

 ④出資金

商法の改正によって株式会社であっても出資金1円から設立できるようになりました。一般的に「1円会社」は社会的な信用が低いと見なされがちなのですが、資産管理会社は対外的な取引もほとんどないため、1円の出資金で設立しても問題はありません。

新規に代表者が銀行口座を開設、そこに出資者の名前で振り込みをしてその事実が分かる通帳のコピーなどを法務局に提出します。

⑤会社設立費用

株式会社を設立する場合は総じて2024万円程度、合同会社の場合は610万円程度が必要です。これらは公証役場や法務局などに支払うものです。

以下が、株式会社と合同会社それぞれの設立に必要な費用です。

株式会社

定款認証の公証人手数料 5万円
登録免許税 15万円
定款印紙代 4万円
定款、登記簿の謄本手数料 数千円

合同会社

登録免許税 6万円
定款印紙代 4万円
定款、登記簿の謄本手数料 数千円

定款の取り扱いについて、最近では電子定款といって公証役場への提出をペーパーレスにすることで4万円の費用節約ができるようになっています。設立時だけのコストですが安いに越したことは無いので、電子定款を選択されることをオススメします。

株式会社、合同会社それぞれ「定款印紙代」の項目が無料になります。

(4)役所への届け出

これらの必要なものを揃えたら、本店所在地となる場所の管轄である法務局に登記申請を行います。

これとは別に、税務署、自治体などに以下の必要書類を提出します。

①法人設立届書(定款コピー、株主名簿、設立時貸借対照表を添付)

税務署に会社設立の事実を届け出るための書類で、開業届とも呼ばれます。国税庁のサイトに書式があります。

⇒国税庁「法人設立届出書

②青色申告承認申請書

資産管理会社の節税メリットをいかすために必要な書類です。会社設立から3ヶ月以内に提出します。

⇒国税庁「青色申告の承認申告書

③給与支払事務所等の開設届出書

源泉徴収した従業員の所得税納付を毎月から年の2回にすることができる特例の申請書です。10人未満の会社であれば適用されるので、事務負担軽減のために提出しておきましょう。

⇒国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

ここまで税務署に提出する書類で、こちらは自治体に提出する書類です。

④事業開始の届出

本店所在地を管轄している都道府県や市町村に対して、開業の事実を知らせるための書類です。各自治体のホームページに書式があるので、それをダウンロードして記入すると簡単です。

これら一連の書類作成や提出において、経験のない方がやるには難しく感じたり、面倒に感じることもあると思います。会社設立については司法書士や代行サービス会社などがあり、次項でご紹介していますが、それ以外にも税理士がサービスの一環で無料で行っているところも多くなってきているので、そういったサービスを利用するのも一考です。

(5)資産管理会社設立には代行サービスがオススメ

ここまで資産管理会社設立のための必要書類や書類の提出先などを解説してきましたが、これら一連の作業を代行してくれるサービスがあります。おおむね1万円以内の手数料でサポートしてくれるので、とても便利です。

書類や印鑑などを揃えるのは自分自身の作業ですが、こうした必要な作業についても丁寧にサポートしてくれるので資産管理会社設立時の強い味方となります。

ネット上には会社設立代行サービス業者が無数に存在しますが、実績数や料金面などにおいて以下の業者がオススメです。

5、資産管理会社の役員報酬を決める際の考え方

資産管理会社にとって、役員報酬は事実上の資産移転、資産分散です。会社からどれだけの「報酬」を支払うかによって税制上の扱いが異なるため、それを踏まえた報酬額を決める必要があります。

(1)役員報酬の決め方2

一般の事業会社とは異なり、資産管理会社は代表者と不動産オーナーが同じ利害関係にあります。会社の役員報酬を決めるには会社を優先するか、役員(社員)を優先するかという2つの方向性がありますが、資産管理会社の場合は法人と個人のそれぞれが持つ税制上の特性を理解した上で、「どちらにキャッシュを置くのが得策か」で決めることになります。

(2)所得税と法人税の税率の違いに着目

資産管理会社を活用するメリットとして、「2ー(1)不動産収益などに大きな節税効果」の項で所得税と法人税の税率の違いに着目をしました。役員報酬についてもそれと同様で、役員に報酬を出しすぎると所得税率が高くなってしまうことを考慮して、ここは法人税の最低実効税率である「22.86%」に注目します。

法人に利益を取らせたとしても最低限22.86%の税負担があるので、それを下回る金額であれば役員報酬として役員に分配した方が税金が少なくなります。5275,000円までの所得税実効税率が20.21%なので、ここにひとつの分岐点があります。

資産管理会社に入るキャッシュの規模を考慮して、役員報酬を決める際には「527万5,000円」を意識するのが良いと思います。

もっとも、相続対策として役員報酬を活用した資産移転(生前贈与)を早期に進めたい場合は、この限りではありません。

まとめ

最後までお読みいただいた方の中には、「こんなにメリットがあるなら資産管理会社を持たない意味が分からない」と思われた方もおられることでしょう。まさにその通りで、不動産投資や資産形成との関わりを考えるとこのメリットを見過ごす手はないと思います。

しかしメリットだけではなく、少ないですがデメリットもあります。それを踏まえた上で資産管理会社を有効に活用して資産防衛、資産の有利な継承にお役立ていただければと思います。

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